【記憶のかけらQUEST】シリーズ説明
『記憶のかけらQUEST』は、人生のささやかな思い出や、誰もが胸の中にしまっている“あの瞬間”を、エッセイや小さな物語として掘り起こすシリーズです。フィクションとノンフィクションを織り込んで――懐かしさ、共感、そして小さな発見をシェアする場所。それぞれが持つ“記憶のかけら”を旅することで、新しい自分や誰かの人生の一部に出会えるかもしれません。
日々の中でふとよみがえる記憶、忘れかけていた感情、大人になった今だからこそ見えてくる“心の宝物”。記憶の断片を、物語として再体験してみませんか?
どこまでも続く“ビッグシューター”の日々。誰かに「いい加減他にやることないの?」と笑われそうだけれど、当時の僕にとってはこれが生きがいであり、最高の“遊び”だった。決してパチンコ依存症のような重苦しさはなかった。ただ、毎日が眩しくて、何をしていても結局ここに戻ってきてしまう自分が、どこか誇らしかった。
ルーティーンと、かけがえのない日常
今日は夜のバイトも休み。久々に仲間で家飲みしようと約束。やっぱりパチンコでひと勝負して、その勢いのまま夜を盛り上げる。そんな流れが自然とできていた。
以前のように無鉄砲にあちこちの店へ行くことはやめて、今は2店舗に絞って攻略中。なにせ、スマホもネット台情報も存在しない時代。店の雰囲気や常連さんとの会話が、僕たちの“インターネット”だった。
店に入り、まずはお気に入りのキャメルを一本。甘い香りを鼻に当て、ジッポで火をつけて煙をゆっくりと吐き出す。その間に前日の台の様子を思い出しながら今日のコンディションをチェック。台を確保したら、今度はジョージアのテイスティを買いに走り、仲間や常連さんに配り歩く。こうした情報ネットワークが、台の攻略にも欠かせないと心から信じていた。
番長、謎の“探索者”出現
さあ、台も選んだし一息ついていると、番長が隣に座る。これがなんだか珍しい。「どうしたの?」と尋ねれば、
「違うとぞ、25歳くらいの飲み屋風の姉ちゃんとチンピラヤクザみたいなのがお前を探しよるばい。」
と少し焦った顔。どうやら、何やら妙な連れが僕を探しているらしい。心当たりは全くないけれど、バイト先でもパチンコ談義はしているし、どこの店に行くかもみんな知っている。「まあ、悪いことはしてないし大丈夫だろう」と明るく返すものの、ちょっとしたスリルで胸は高鳴った。
今日の勝負、そして遭遇
気を取り直して、ようやくビッグシューターで実戦開始。投資2,000円で出だしは好調、終盤まで結果を伸ばす。粘ったけれど打ち止めにはならず、結局1箱ゲットで終了。勝ちでも負けでもない。景品を交換し、店を出ようとしたその時、事件が——
さっき番長が言っていた“チンピラ”に捕まり、
チンピラ:「おい、何してくれるんきさん(おい、何してくれるんお前)」
僕:「は?」
何のことだか全くわからない。よく見ると、連れているのは以前台を譲ってくれたあのお姉さん。とっさに頭によぎるのは「美人局(つつもたせ)」か? でも心当たりは一切ない。ていうか心当たりも何も手すら握ってないぞ、、、と困惑していると、周りの空気もざわつきはじめた。
“梅宮さん”の登場と恩義
その時、常連の“梅宮さん”(色黒で巨体、本職の噂もある梅宮辰夫似の名物男)が「どうしたん?」と声をかける。
「因縁付けられよるんです」と伝えると、なんと梅宮さんがそのチンピラを店の外へ引きずり出し、ボコボコに……!喧嘩沙汰の迫力は本物で、僕たちは心底ビビった。
梅宮さん:「もう大丈夫やけん」
そう言い放つと、梅宮さんはスタスタと一発台コーナーへ。
かっこいいやら、恐ろしいやら……結局、チンピラもお姉さんも消え、何事もなかったかのように平和な空気が戻った。
若さと勢い、そして“怖さ”の狭間で
思い返せば、あの時ほど楽しさと紙一重の怖さを感じた日はない。勝負も友情も、予想外の出来事も全部ひっくるめて、キラキラした青春の一部だった。
パチンコ台の前で繰り広げられる日常、時に事件が起き、時に仲間や常連さんとの絆が深まる。青春フルスロットルで駆け抜ける中で、僕たちは“大人になる”一歩一歩を踏みしめていたのだ。
ーー
【第5話に続く】



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