空き家管理を始めるまで
前回の記事「委ねる人生から遂行する人生へ」で書いた通り、この15年ほど、自分は「流される生き方」から「自分で決めて動く生き方」へ、少しずつ舵を切ってきました。その延長線上に、今回の「空き家管理」というテーマがあります。
若い頃の自分なら、「いつか何か大きなことをやってみたい」と、ぼんやりした憧れだけを追いかけていたかもしれません。50代になった今は、派手さよりも、もう少し静かで、地に足のついた形で、人の暮らしや心に関わっていきたいと感じるようになりました。
その一つの具体的な形として、自分は「空き家管理を始めてみる」ことにしました。
なぜ空き家管理なのか
もともと、自分が考えてきたのは「民泊」でした。「心がしんどい人が、少し休める場所」をつくりたい。そんな思いから、これまで民泊に関する本を読んだり、実際に宿に泊まりに行ったりしてきました。
民泊について調べていく中で、必要な手続きや設備、近隣との関係づくりなど、現実的な条件が少しずつ見えてきました。そこまで考えを進めていくと、自然と「そもそも、その元になる家をどう保っていくのか」というところに意識が向きました。
人が暮らさなくなった家は、そのままでは傷みやすく、周りの景観や安全にも影響してきます。民泊として活用するにしても、売却するにしても、その前提として「空き家をどう管理するか」という問題があります。自分の中で、そういう順番がはっきりしてきたのです。
日本各地で空き家は増え続けていて、その多くは実家だったり、親から相続した家だったりします。住む人がいなくなった途端、建物は想像以上の速さで傷み、草木は伸び、防犯や災害の面でもリスクが高まります。一方で、所有者の多くは仕事や家族の事情で頻繁には通えず、「いつかちゃんと考えないと」と思いながら、先送りになっていることも多いようです。
自分が大切にしたい民泊は、「空き家をうまく使えばいい」というだけの話ではありません。その家の持ち主が抱えている不安や迷いに、できるだけ近いところで関わりたい。そう考えたとき、民泊よりも前の段階にある「空き家管理」から、自分の手でやる必要があると感じました。
そこで、いきなり民泊から始めるのではなく、まずは空き家管理を、自分の仕事としてきちんと形にしていくことにしました。「民泊へ向かう途中の入口」としての空き家管理。ここから着手するのが、自分にとっていちばん自然な順番だと思っています。
空き家になる前から、少しだけ関わる
もう一つ、大事だと感じていることがあります。それは、「空き家になってから」だけでなく、その前の段階でもできることがある、ということです。
住んでいる人の年齢や健康状態、家族の暮らし方を見ていけば、「この家はいずれ空き家になるかもしれない」という気配は、かなり早い段階から見えてきます。頭のどこかでわかっていながら、仕事や介護や子育てに追われて、「いつか考えないと」と思ったまま、先送りになってしまう。その結果、誰も住まなくなってから慌てて動き出し、「もっと前から準備をしておけばよかった」と感じるケースも少なくありません。
本当は、「まだ住んでいるうち」から、家の将来を少しだけでも考えておくことが大切だと思います。たとえば、月に一度の換気や外回りのチェックを、家族だけで抱え込まずに誰かに手伝ってもらう。そういった形で、まだ人が暮らしている状態の家の管理を、一部だけ請け負う関わり方もありだと考えています。
それは、目の前の負担を軽くするだけでなく、「この家をこれからどうしていくか」を、家族で少しずつ話し始めるきっかけにもなるはずです。空き家になってから慌てるのではなく、その前から少しずつ伴走していく。そんな役割も、自分の空き家管理の中に含めていきたいと思っています。
自分がやろうとしていること
自分が始めようとしている空き家管理は、難しいことをするわけではありません。基本は、月に一度の定期チェックと、写真付きの報告です。
玄関や窓の施錠、雨漏りの有無、外壁や屋根、庭木の状態。家の中に入れる場合は、換気や通水、簡単な清掃なども行います。その結果を写真と簡単な文章にして、メールでお知らせします。ここまでは、いわゆる一般的な空き家管理サービスと、大きくは変わりません。
自分ならではの要素として、希望される方には「映像での報告」もできます。もともと家族の記録を残すために続けてきた動画編集が、趣味の延長として手元にあります。せっかくなので、その感覚を活かして、物件の様子を1〜2分ほどの短い動画にまとめることもできます。
映像での報告は、あくまでオプションです。「動画でも様子を見てみたい」と感じる方に、必要なときだけ選んでもらえればと考えています。写真と文章のシンプルな報告で十分だという方には、その形を大事にしていきます。
今のところイメージしているのは、次のような二つのプランです。
- プランA(標準管理)…月1回の現地チェック、写真付き報告書、簡易清掃など、基本的な管理を行うプランです。
- プランB(映像報告付き)…プランAの内容に加えて、1〜2分程度の短い動画で物件の様子をお伝えします。動画で見ることで、「今の家の状態」がより具体的にイメージしやすくなると思います。
このシリーズで書いていくこと
このシリーズ「空き家管理、始めました」では、かっこいい成功談を書くつもりはありません。空き家管理の現場で、自分が実際にやっていること。そこで出会う所有者の方とのやりとり。家の中でひとりで過ごす時間に、ふと考えたこと。
そういったものを、淡々と、等身大で記録していこうと思っています。
たとえば、今後はこんなテーマを書くかもしれません。
- 初めて空き家の鍵を預かったときに感じたこと
- 月1回のチェックで見えてくる「家の変化」
- 所有者の方とのメールや文通に残った言葉
- 売却や解体を前に揺れる気持ちのこと
- まだ住んでいる家の「これから」を一緒に考える場面
空き家と向き合うことは、その家で過ごしてきた時間や、家族の歴史と向き合うことでもあります。同時に、自分自身のこれからの生き方を、もう一度見つめ直すきっかけにもなると感じています。
同じ世代の方へ
この連載は、おおよそ45〜65歳くらいの、中年以降の方をイメージして書いています。実家や相続した家のこと、これから先の仕事のこと、自分が本当にやりたいこと。そういったテーマに、どこか引っかかりを感じている方が多い世代だと思うからです。
自分もその一人として、空き家管理という形で、小さく一歩を踏み出してみます。うまくいくこともあれば、思った通りにいかないことも、きっとたくさん出てくるはずです。
この連載は、そうした試行錯誤も含めて、そのまま書いていくための記録です。同じように迷っている誰かが、どこかのタイミングでこの記事を見つけて、「こういう始め方もあるのか」と、ほんの少しでも何かの参考になればうれしく思います。
空き家管理Q&A:よくあるご質問
Q1. 空き家管理を頼むのは、何だか他人任せにしている気がして、後ろめたさを感じます。
A. その気持ち、とてもよくわかります。でも、頼むことは”逃げ”ではなく、むしろ家と向き合うための選択だと思います。遠方で通えない、仕事や介護で時間がない。それは仕方のないことです。大切なのは、「見ないふりをしない」こと。管理を誰かに託すことで、かえって家のことを定期的に意識できるようになる。そういう向き合い方もあると思っています。
Q2. まだ実家に親が住んでいるのですが、将来のことを考えると不安です。今から何かできることはあるでしょうか。
A. 今のうちから「少しずつ慣らしていく」という視点があると、後が楽になることが多いです。たとえば、親が元気なうちに月1回だけ外回りのチェックを一緒にやってみるとか、庭の手入れを手伝ってもらうとか。そういう小さな関わりが、家の状態を知るきっかけになります。そして何より、親と「この家をどうしたいか」を少しずつ話せる空気が生まれます。慌てて決める必要はありません。少しずつで大丈夫です。
Q3. 空き家管理を頼むと、費用がずっとかかりますよね。いつまで続ければいいのかわからず、踏み切れません。
A. 確かに、期限が見えないまま払い続けるのは不安ですよね。ただ、空き家管理は「ずっと続けるためのもの」というより、「次のステップまでのつなぎ」として使うほうが気持ちも楽だと思います。売却するにしても、貸すにしても、放置された家では話が進みません。管理をしている間に、自分の中で少しずつ整理がついてくることもあります。いつでも辞められる形で始めていい、と思っています。
Q4. 報告書が送られてきても、正直どう見ればいいのかわかりません。
A. 報告書を見ても「で、これは大丈夫なの?」と感じること、ありますよね。写真が並んでいても、それが”普通”なのか”異常”なのか、慣れていないとわかりません。だからこそ、報告する側には「変化があったときに、ちゃんと言葉で伝える」姿勢が必要だと思っています。「前回と比べてこうなっています」「ここは少し注意が必要です」そういう一言があるかどうかで、安心感はまったく違ってきます。
Q5. 空き家管理を頼む業者の選び方がわからず、どこに頼めばいいのか迷っています。
A. 選ぶ基準は人それぞれですが、個人的には「話しやすいかどうか」がいちばん大事だと思います。料金やサービス内容も大切ですが、結局のところ、長く続けていくには「この人なら安心して任せられる」という感覚が必要です。問い合わせたときの対応、説明の丁寧さ、こちらの事情を聞いてくれる姿勢。そういうところに、その人の仕事の姿勢が出ます。最初のやりとりで違和感があれば、無理に決めなくていいと思います。
Q6. 空き家になってから傷みが進むのが早いと聞きますが、本当でしょうか。
A. 本当です。人が住まなくなった家は、想像以上に早く傷みます。換気がされないと湿気がこもり、カビが発生します。水道を使わないと配管が錆びたり、虫が入り込んだりもします。庭木も放置すれば伸び放題で、隣家に迷惑をかけることもあります。ただ、定期的に風を通し、水を流し、目で見て異変に気づく。それだけで、進行を大きく遅らせることができます。家は、ほんの少しの手間でずいぶん保たれるものです。
Q7. 動画での報告は便利そうですが、逆に”生々しすぎる”のが怖い気もします。
A. そう感じる方もいると思います。写真だけのほうが、適度に距離を保てて楽だという気持ちもわかります。動画は空気感まで伝わる分、現実がそのまま目に入ってくる。それが安心材料になる人もいれば、逆に重たく感じる人もいます。だから、動画はあくまでも選択肢の一つです。必要なときだけ、見たいと思ったときだけ使ってもらえればいい。無理に勧めるものではないと思っています。
Q8. 自分でたまに見に行けば済む話なのに、わざわざ他人に頼む意味はあるのでしょうか。
A. 自分で通えるなら、それがいちばんいいと思います。ただ、「たまに」では見落としが出やすいのも事実です。たとえば3ヶ月ぶりに行ったとき、すでに雨漏りが進んでいた、庭木が隣家に越境していた、ということもあります。月に一度、同じ目線でチェックする習慣があると、小さな変化にも気づきやすくなります。自分で行くのと、誰かに頼むのと、両方を組み合わせている方もいます。どちらが正解というわけではありません。
Q9. 家の中を他人に見られるのに抵抗があります。外だけの管理でも意味はありますか?
A. 外だけの管理でも、十分に意味があります。外壁のひび、屋根の状態、雨樋の詰まり、庭木の伸び具合。外から見えることだけでも、把握しておくべきことはたくさんあります。もちろん、室内の換気や通水ができればより理想的ですが、最初は外回りだけで始めて、慣れてきたら少しずつ範囲を広げる、という形でもいいと思います。無理に全部開けなくても、できる範囲から始めればいいんです。
Q10. 売却も解体も、まだ決められません。そんな状態で空き家管理を頼んでもいいのでしょうか。
A. むしろ、決められないからこそ頼む、という考え方でいいと思います。決断を先送りにしているわけではなく、「決めるまでの時間をきちんと保つ」ための選択です。放置してしまうと、家はどんどん傷み、選択肢も狭まっていきます。管理を続けながら、自分の中で少しずつ整理していく。そういう時間の使い方もあると思っています。焦らなくていいです。
Q11. 空き家管理を頼んだら、近所の人にどう思われるか気になります。
A. 「誰かが定期的に来ている」ということ自体が、近所にとっては安心材料になります。むしろ、誰も来ない家、草が伸び放題の家のほうが、近隣の不安を招きます。管理を頼んでいることは、家を大事にしている証拠です。恥ずかしいことでも、後ろめたいことでもありません。必要なら、近隣の方に「定期的に管理に来てもらっています」と一言伝えておくだけで、関係も良好に保てます。
Q12. この先ずっと誰も住まない家を、それでも残しておく理由ってあるんでしょうか。
A. 理由は、人それぞれです。思い出が詰まっている、いつか帰りたい、親の気持ちを尊重したい、子どもに選ばせたい。どれも間違いではありません。一方で、「もう手放してもいいのかもしれない」と感じ始めている自分もいる。その揺れ動く気持ちを、無理に結論づけなくてもいいと思います。大切なのは、その家と”どう向き合い続けるか”です。残すにしても、手放すにしても、その過程で自分が納得できる形を探していけばいいんだと思います。
よければ、続きも読んでみてください







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