「空き家と、お金の話」シリーズ ~第4回~

お金の使い方
空き家と、お金の話

今は決められないときに、この家にいくらまで出せるか考える

「売る」「貸す」「壊す」をまだ決められないときは、まずお金の上限を考えてみる。

気持ちの整理がつかないまま時間が過ぎていくことは、珍しいことではありません。
この回では、結論を急ぐ前に、 「この家に毎年いくらまでなら出せるだろう?」 という視点で、いったん頭の中を整理してみます。

このシリーズ「空き家と、お金の話」では、空き家を持ち続けるときに出ていくお金や現実的なコストのことを、 「自分の頭を整理するメモ」のようなつもりでまとめています。

「今すぐ決める」のではなく、 「まずはお金の流れを見えるようにしておく」。そんなスタンスで、少しずつ整理していきます。

気持ちとお金の整理

お金と気持ちが、別々のテーマになってしまっている

「売る」「貸す」「壊す」――頭の中ではいろいろな選択肢が浮かぶけれど、どうしても決めきれない。

実家や空き家について、そんな状態が何年も続いている方は少なくないと思います。
決められないからといって怠けているわけでも、現実から目をそらしているわけでもなくて、 「気持ち」と「状況」と「お金」のバランスが、まだ整っていないだけ のことも多いはずです。

空き家のことを考えるとき、多くの人が頭の中で行ったり来たりしているのは、

  • 親や家族、思い出への気持ち
  • 固定資産税や維持費といった、お金のこと
  • 将来どうしたいか分からない、というモヤモヤ

「親の家だから、できれば大事にしたい」「でも、このままお金を払い続けていいのか不安」。
この2つが同時に浮かんでくると、どちらも大事だからこそ、身動きが取りづらくなります。

気持ちの部分はすぐには整理できませんが、 お金の部分だけでも一度、紙の上に出しておくと、「今は決められないなりに、ここまでは見えている」 という感覚を持ちやすくなります。

まずは現状把握

まずは「今、どれくらい出ていっているか」をざっくり並べる

第1回・第2回・第3回で見てきたように、空き家を「なんとなく持ち続ける」だけでも、いろいろなお金や手間が静かに積み重なっていきます。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 保険料
  • 電気・水道などの基本料金
  • 草刈りや庭木の手入れ、片付けの費用
  • ハチの巣や害虫・害獣の駆除、ちょっとした補修
  • 様子を見に行くための交通費や時間

まずは、 「今の自分の家で年間どれくらい出ていっているか」を、ざっくり並べてみる

正確な家計簿にする必要はなく、「だいたいこのくらいかな」という感覚で書き出すところからで十分です。

  • 固定資産税・都市計画税: およそ  円/年
  • 保険料:         およそ  円/年
  • 光熱費の基本料金:    およそ  円/年
  • 草刈り・剪定・庭木の手入れ: およそ  円/年
  • 片付け・不用品処分:   およそ  円/年(数年に一度なら、年あたりに割って)
  • ハチの巣・害虫・害獣などの臨時費用: 「起きた年に」 およそ  円
  • 様子見の帰省や交通費:  およそ  円/年

「正確な数字じゃないといけない」と思うとペンが止まってしまうので、 まずは通帳やクレジットの明細をざっと見て、「だいたいこのくらいかな」というレベル で十分です。

5年・10年で見る

「この先5年・10年で見たときに、合計でどれくらいか」を眺めてみる

年間のざっくりした金額が見えてきたら、次は少し時間の幅を広げてみます。

  • この先5年間、今のペースで持ち続けたら、合計でいくらぐらいになりそうか
  • 10年間だったら、どのくらいの金額になるのか

を、紙の端に計算して書いてみます。

たとえば、年間 20万円前後 なら、 5年間でおよそ100万円、10年間でおよそ200万円

実際の金額は前後しても、「このまま今の状態を続けたときの目安」として眺めてみるだけで、感覚はかなり変わってきます。

もちろん、そのあいだに大きな修繕が入ったり、逆に何もトラブルが起きなかったりと、実際の金額は前後します。

このとき大事なのは、「だからダメだ」と結論を出すことではなくて、 「自分の感覚として、これを重いと感じるか、許容できると感じるか」 を、自分なりに確かめてみることです。

自分なりの上限

「この家に、毎年いくらまでなら出してもいいか」を言葉にしてみる

ここから、いよいよ第4回の中心にしたい問いに入ります。

「この家に、毎年いくらまでなら出してもいいと思えるか?」

たとえば、

  • 今の家計の状況からすると、空き家に出せるのは年間10万円くらいまでかな
  • 今後5年だけ、と決めるなら、もう少し増えても受け止められそう
  • 子どもが独立するまではあまりお金をかけられないので、今は最低限にしたい

など、人それぞれのラインがあるはずです。

この「自分なりの上限ライン」が見えてくると、

  • 今は、今のペースくらいまでは許容できる
  • さすがに今のままだと、少しオーバーしている気がする
  • これ以上は出せないから、どこかでやり方を変える必要があるかもしれない

といった感覚が、少しだけ言葉になるかもしれません。

お金の中身を分ける

「出してもいいお金」と「出したくないお金」を分けてみる

もうひとつ、考えてみると役に立つのが、

  • この家に対して「出してもいい」と思えるお金
  • 正直なところ「できればあまり出したくない」と感じるお金

を分けてみる、という視点です。

たとえば、

  • 親の思い出もあるので、固定資産税と、最低限の草刈り・見守り費用くらいは出してもいい
  • ただ、家の中の大規模な修繕に何十万円もかけるのは、今の自分には難しい
  • ハチの巣や害獣の駆除など、発生したときの臨時費用は、「起きたときに考える」枠に入れておく

といった感じで、 「ここまでは自分の中でOK」「ここから先は慎重に考えたい」 と線を引いてみます。

この線引きは、誰かに見せるための正解ではなく、自分の中での「今の基準」です。

それが見えてくると、将来、売る・貸す・解体するなどを検討するときにも、 「自分にとってどこまでが現実的か」を考えやすくなります。

今は決められない前提で

「今は決められない」ことを前提にしながら進める

ここまで読んで、「やっぱり、今はまだ決められないなあ」と感じる方も多いと思います。

それでいいのだと思います。

空き家のことは、「お金の損得」だけで割り切れる話ではありません。

親や家族への思い、これまで過ごしてきた時間、兄弟姉妹との関係など、いろいろなものが絡み合っているからこそ、「どうするか」を決めるのに時間がかかるのは、むしろ自然なことかもしれません。

第4回でやりたかったのは、「今すぐ結論を出すこと」ではなくて、

  • 今どれくらいお金を出しているかを一度見えるようにすること
  • この家に対して、毎年いくらまでなら出してもいいかを、自分なりに考えてみること

その2つを通じて、 「今は決められないなりに、ここまでは分かっている」という足場 をつくることです。

見守りの位置づけ

そのうえで、見守りや管理をどう位置づけるか

最後に、このシリーズらしく、「見守り」の話に少しだけ触れておきます。

もし、今の家の状態がよく分からないまま、固定資産税や保険、草刈りなどにお金を出し続けているとしたら、その一部を、

  • 家の状態を知るための見守り
  • 将来の選択を考えるための「記録」

にあてる、という考え方もあるかもしれません。

ここでも、具体的なサービス名は出しませんが、

  • 月に1回、誰かが外まわりや室内を見に行き、写真と一緒に報告を送ってくれる
  • その記録を、家族でときどき見返しながら「そろそろどうしようか」と話すきっかけにする

といった形で、 「ただ出ていくお金」を、「これからを考えるためのお金」 に少しずつ変えていくこともできます。

今すぐ結論を出さなくてもいい

「今はまだ決められない」という気持ちを抱えたままでも、 お金の出どころと上限を一度整理しておくことで、この家とどう付き合っていくかを、自分のペースで考えていけるといいなと思います。

「空き家と、お金の話」Q&A:なんとなく持ち続けている人のために

Q1. 親の家をどうするか決められないまま、何年も時間だけが過ぎてしまいました。そんな自分を責めてしまうのですが、どう考えたらいいでしょうか。

A. 空き家のことを「決められない」まま時間が過ぎるのは、決して珍しいことではありません。親や家族への思い出、これまで過ごしてきた時間、兄弟姉妹との関係など、ひとつひとつが重いテーマだからこそ、簡単に答えを出せなくて当然ともいえます。自分を責める視点から少し離れて、「それだけ大事なことなんだ」と受けとめてみるだけでも、少し肩の力が抜けるかもしれません。今は結論までたどり着かなくても、「お金のことだけ先に見えるようにしておこう」くらいの温度感で向き合うことも、一つの歩み方だと思います。

Q2. 「この家に毎年いくらまで出せるか」を考えると言われても、ピンときません。どんなふうに考え始めればいいでしょうか。

A. 「いくらまで出せるか」と考えると、いきなり大きな判断を迫られたような気がして戸惑いますよね。最初は「上限額」を完璧に決めようとするのではなく、自分の感覚に耳を傾けるところからで大丈夫です。「今の家計の感じだと、ここまでならなんとか」「これ以上だと正直きつい」と、心がざわつくラインと、まだ受けとめられるラインをゆっくり探っていきます。その過程で浮かんできた言葉を、ざっくり紙にメモしておくと、あとから見返したときに自分なりの基準が少しずつ形になっていきます。

Q3. 親の家には思い出がたくさんあって、できれば壊したくありません。でも、お金のことを考えると不安になります。この気持ちの間で揺れ続けるのがつらいです。

A. 「守りたい」という気持ちと、「お金が心配」という現実が同時に見えてしまうと、どちらも大切なだけに心が引き裂かれるような感覚になりますよね。その揺れは、どちらかが間違っているから生まれるものではなく、どちらも本音だからこそ生まれているのだと思います。どちらか一方を無理に消そうとするより、「今はその間で揺れている自分がいる」と認めてあげることも、一つの向き合い方です。そのうえで、お金の部分だけでも一度紙に出してみると、「少なくとも、ここまでは分かっている」という足場が、ほんの少しだけできてきます。

Q4. 空き家にかかっているお金を紙に書き出そうとしても、金額がバラバラで分からなくなり、手が止まってしまいます。こんな状態でも意味はあるのでしょうか。

A. 金額を書き出そうとして混乱するのは、ごく自然なことです。固定資産税や保険、草刈り、光熱費の基本料金など、それぞれ支払いのタイミングも金額も違うので、最初から整った一覧にしようとすると、どうしても疲れてしまいます。「正確に」まとめることより、「だいたいこのくらい」と感覚を外に出してみること自体に意味があります。多少あいまいでも、いくつかの数字が並んだ紙が目の前にあるだけで、頭の中だけで考えていたときよりも、「お金の重さ」を少し冷静に見つめやすくなっていきます。

Q5. 5年・10年のスパンでお金を考えると、怖くなってしまいます。それでもあえて長い期間で考える意味はありますか。

A. 5年や10年という単位で金額を眺めると、「こんなにかかるのか」と不安が強くなることも多いと思います。ただ、その怖さにふたをしてしまうと、なんとなくの不安だけが増えていきやすくなります。長い期間で見てみる狙いは、「この金額だからダメだ」と結論を急ぐことではなく、「自分の感覚として、これは重いのか、それとも受けとめられる範囲なのか」を確かめることにあります。長期で見た数字に向き合ったときに、胸の中でどんな言葉が浮かぶのか。そこに気づいていくことが、次の一歩を考えるヒントになるのだと思います。

Q6. 「この家に毎年いくらまでなら出してもいいか」と聞かれても、家族の顔や親のことが浮かんできて、数字が全然出てきません。そんなときはどう受け止めればよいでしょうか。

A. 数字を考えようとした瞬間に、親の姿や家族の会話が思い出されてしまうのは、とても自然なことです。空き家に向き合うというのは、単に家計の問題ではなく、家族の歴史と向き合うことでもあります。すぐに具体的な額が出てこないからといって、「ちゃんと考えていない」と決めつける必要はありません。まずは「数字より先に、気持ちが出てくる自分がいる」と認めたうえで、「じゃあ今は、どこまでなら無理なく支えられそうか」と、少しだけ現実のほうにも視線を向けてみる。そのゆっくりとした揺れのなかで、じわじわと自分なりのラインが見えてくることもあります。

Q7. 「出してもいいお金」と「できれば出したくないお金」を分ける、という考え方が新鮮でした。でも、境界線が曖昧で迷います。あいまいなままでもよいのでしょうか。

A. どこからが「出してもいい」で、どこからが「出したくない」なのか、その境目はきっちり決まるものではありません。月によって、状況によって、気持ちによっても揺らいで当然です。この線は、誰かに見せるための「正解」ではなく、自分の中での「今の基準」にすぎません。だからこそ、「だいたいこのあたりまではOKかな」「ここから先は踏み込みたくないな」と、ぼんやりしたまま書き留めておくだけでも十分意味があります。そのゆらぎごと引き受けながら、「今の自分はこう感じている」と確かめていくこと自体が、家との距離感を見つけていくプロセスなのだと思います。

Q8. 兄弟姉妹のあいだで、空き家にかけるお金の感覚が大きく違います。自分だけが心配しているようで、もやもやします。

A. 兄弟姉妹といっても、それぞれの生活や価値観、親との距離感は少しずつ違います。空き家に対する感じ方や、お金の重さの受けとめ方に差が出るのは、ごく自然なことです。ただ、自分だけが心配を抱えているように見えると、孤独や不公平感が大きくなってしまいますよね。そんなときは、「誰が正しいか」を決めようとするより先に、「自分はこんなふうに感じている」と、まずは自分自身の感覚を言葉にしてみることが大切かもしれません。その言葉が少し整理されてくると、いつか家族と話す場面が訪れたときにも、自分の気持ちを落ち着いて伝えやすくなります。

Q9. 「今は決められない」という状態のままでいて、本当に大丈夫なのでしょうか。どこかで決断を急がなければならない気がして落ち着きません。

A. 「決めなければ」と自分を急かす気持ちは、とても真面目な感覚だと思います。一方で、親や家族への思いが深いほど、「決める」こと自体に時間がかかるのも自然なことです。今できることは、「決めていない」状態にとどまり続けるのではなく、その手前で「今どれくらいお金が出ているか」「自分はどこまでなら出してもいいと思っているか」を少しずつ見えるようにしておくことかもしれません。結論を出すタイミングはすぐではなくても、「ここまでは分かっている」という土台があると、いつか決断と向き合うときにも、自分を支えてくれる材料になります。

Q10. 見守りや管理にお金をかけることに、どこか後ろめたさを感じてしまいます。「そこまでして残す意味があるのか」と自分で自分に問いかけてしまいます。

A. 見守りや管理にお金を向けると、「その分、他に使えるお金が減る」という感覚が先に立ちやすいですよね。そんなときに、「そこまでして残す意味があるのか」と自分に問いかけてしまうのも、自然な反応だと思います。ただ、見守りのためのお金は、「ただ出ていく」だけのコストではなく、「この家の状態を知るための費用」でもあります。今どういう状態なのか、何が起きているのかを知ることは、将来の選択に備えることにもつながります。意味があるかないかを今すぐ決めつける必要はなく、「これからを考えるための材料を集めている時間」と捉えてみることもできるかもしれません。

Q11. 親の家にかけるお金を考えると、自分たちの生活や子どもの教育費とのバランスが気になります。どこまで優先してよいのか、分からなくなります。

A. 親の家は大切にしたいけれど、自分たちの生活や子どもの将来も守らなければならない。その板挟みの感覚は、とても苦しいものだと思います。「どちらを優先すべきか」と二択で考えてしまうと、どちらを選んでも罪悪感がつきまといやすくなります。そこで一度、「自分たちの生活を安定させるために必要なラインはどこか」「そのうえで、家に出せるのはどれくらいか」と、段階を分けて眺めてみると、少しだけ見え方が変わってくることがあります。その過程で見つけた自分なりのラインは、誰かに説明するためではなく、自分の納得の拠りどころになっていきます。

Q12. お金の整理をしてみても、「だから売るべき」「だから残すべき」といった結論にはたどり着けません。整理する意味があったのか、正直よく分からない気持ちです。

A. お金の整理をしたあとに、はっきりした結論が出ないと、「意味があったのかな」と感じるのは当然かもしれません。でも、この段階で目指しているのは、「売る・貸す・壊す」の答えを出すことではなく、「今は決められないなりに、ここまでは分かっている」という足場をつくることです。数字や感覚を書き出してみると、心の中のもやもやがすぐに晴れるわけではありませんが、そのもやもやの輪郭が少しずつはっきりしてきます。その輪郭を持ったまま時間を重ねることで、あるタイミングでふと、「そろそろ、次の一歩を考えてみてもいいかもしれない」という気持ちが、自然と芽生えてくることもあります。

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